知る知る見知る
町を歩いていると、僕はなにも知らないと思えてくる。
世の中を見ていると、自分に辟易しそうになる。絶望のような感覚に陥る。
「この世界には、僕の知らないことが多すぎる」
そう思えてくるんです。
でも一生のうちに世のなかのすべてを知ることができない。
当たり前と思うかもしれないけど、そんな自分の小ささを感じることがある。
地球上に立っている、人間ひとり。
だからせめて身近なことくらいについては、知っていたいと思うんです。
このベンチは、あの陸橋は、誰がつくったのか。
何でできているのか。素材はどんな性質なのか。
この町はいつできたのか。この明かりはいつ誰が点検しているのか。
ふと思ってしまう。
知り切れないこともあるけれど、ぜんぶ知っていたい。
だから僕は学ぼうと思った。
学生時代は、経済学専攻だった。
社会人になってからは「素材」や「材料」に興味をもって物理学を学び始めた。
木とか鉄とか。僕がふだん浮かべる疑問を解消してくれると思ったから。
人によってそれぞれ生きていきたい世界は違って、必要な知はちがいます。
僕の生きていきたい世界の多くを捉えるには、物理・経済・金融・哲学が必要でした。だからいまでも学ぶ。
外を歩いていると外から入ってくる情報量に、ときどき怖くなる。視界や記憶からどんどん流れ込んでくる。頭のなかで対応しきれなくなるようなことがある。
だから知らないことを知る。知らないことが怖いから。
興味がないことはいいんです。
だけどそうじゃないことは、知っていたい。
知らないと不安だから。
知れば世界が変わる。世の中がおもしろくなる。
知ればすべてが新しく見える。
だから知るんです。